漫画「ゼロからわかる携帯・簡易トイレ」の内容を詳しく解説するページです。このページは「4 ごみ出し編」が対象です。
最終更新日 2024年7月8日
記事執筆 長谷川高士
くまもと水と福祉の研究室 主任研究員
携帯・簡易トイレにはごみに出すうえで守るべき約束があります。「4 ごみ出し編」では、その約束を紹介しています。
Point 1
水気をじゅうぶんに吸わせきり、空気を抜いて袋の口を結ぶ
水気をじゅうぶんに吸わせきることに加えて、ごみに出すうえで守ってほしいことがあります。口を結ぶ時に袋の中の空気を抜くことです。目的は袋の破損防止やごみの少量化です。
安定が【じゅうぶん】でなければ、ごみに出せない
排せつ物をごみに出す携帯・簡易トイレで最も大切なことは、水気を【じゅうぶん】に吸わせきることです。吸収されて、水分が【じゅうぶん】に安定しているから、ごみに出せるのです。
裏を返せば、ごみに出せるのは、水分が【じゅうぶん】に安定している場合に限られます。安定が【じゅうぶん】でなければ、ごみには出せません。
「水気を吸わせきる」という表現の“きる”には、妥協せず【じゅうぶん】を追求してほしい、という願いが込められています。
余分な空気が残らないようにする
水気を吸わせきれたら、袋の口を結びます。このとき守るべき約束の1つが「袋の中に余分な空気が残らないようにする」ことです。
破損防止・ごみ少量化のため
袋の中に余分な空気が残ったままで口を結ぶと、ゴム風船のように膨らんでしまいます。この状態は、次の問題の原因になります。
- 袋が破損しやすくなる:実際に破損すると中の排せつ物が散乱する
- ごみの見かけの体積が増える:保管や運搬の効率が下がり、コスト(費用や手間)が上がる
これらの問題の原因となる「ゴム風船のように膨らんだ状態」は、空気を抜いて口を結ぶことで避けることができます。
結び方のコツ|空気を抜く・ゆっくり・結び目を上に
中に余分な空気が残らない袋の口の結び方とそのコツを紹介します。
中の空気をしっかりと抜く
大切なのは、口を結ぶ前にしっかりと中の空気を抜くことです。
内容物のすぐ上の辺りを片手でつかみ、もう一方の手で下から上(底から口)に向かって、中の空気を押し出します。
これを2、3回繰り返します。
空気を押し出しながらゆっくりと結ぶ
しっかりと空気を押し出しても、まだ袋の中にはわずかに空気が残っています。この状態で慌てて結ぶと、残った空気が袋の中に閉じ込められてしまいます。
そこで動作を分けて、ゆっくりと丁寧に口を結びます。
- はじめに、軽く結び目をつくる
- 次に、残っている空気を押し出すように結び目の下を握る
- 最後に、(下を握ったまま)結び目を絞る
こうすることで、中に余分な空気を残さずに袋の口を結ぶことができます。
結び目の位置を上にすると膨らみにくい
中に残った空気で袋が膨らまないようにするコツがあります。結び目の位置の工夫です。
「1.はじめに」で軽く結び目をつくるときに、その位置を内容物の上端から離すようにします。具体的には「握りこぶし1、2個分」くらい離します。
「ごみを小さくしよう」という意識からか、内容物の上端のすぐ上で結ぼうとする様子をよく目にします。内容物の上端と結び目が近いほど袋の中の空間が狭くなります。そして、中の空間が狭いほど、残った空気によって袋は膨らみやすくなります。
一方で、結び目の位置を内容物の上端から離せば、中の空間を広くすることができます。中の空間が広くなることで、残っている空気による袋の膨らみをおさえることができます。
Point 2
ほかの燃やせるごみとは分けて、「トイレごみ」と書いて出す
(1、2回分ではなく)まとまった量を出すときは、ほかの燃やせるごみと分けるために「それを入れる専用のごみ袋」を用意します。そのごみ袋には、収集する人によく見える大きな文字で「トイレごみ」と書いて出します。
排せつ物のごみには特別の配慮が必要
携帯・簡易トイレで出すごみは排せつ物です。水分を吸収して【じゅうぶん】に安定させたとしても、次の理由から特別の配慮を要するごみだといえます。
- 取り扱いを誤れば、中身が露出するおそれがある
- 中身が露出すれば、公衆衛生上のリスクが上がる
特別に配慮するには「存在が分かる」ことが必要
特定のものだけに特別の配慮をするには、その対象の存在が次の点で明確である必要があります。
- ここにある
- ここにしかない
この2点が明確であれば、収集する人は必要な配慮を適切に行うことができます。
この2点を明確にするための具体的な方法は、次の2つです。
- ほかのものと分ける
- 「それである」と明らかに示す
携帯・簡易トイレのごみは「分けて、書いて、出す」
携帯・簡易トイレでは、収集する人が必要な配慮を適切に行えるように、ほかの燃やせるごみとは分けて、「トイレごみ」と書いて出します。
ほかの燃やせるごみと分ける
携帯・簡易トイレのごみは、ほかの燃やせるごみとは分けて出します。
具体的には、次のことを守ります。
- 携帯・簡易トイレのごみを入れる【トイレごみ袋】を用意する
- 携帯・簡易トイレのごみは【トイレごみ袋】だけに入れて出す(ほかの袋には入れない)
- 携帯・簡易トイレのごみ以外のものを【トイレごみ袋】に基本的には入れない(例外あり※)
※ポリ袋を包む乾いた紙など安定度を増すためのものであれば、【トイレごみ袋】に入れることができます。
「トイレごみ」と書く
携帯・簡易トイレのごみだけを入れた袋の外面には、携帯・簡易トイレのごみが入っている旨を明示します。収集する人に携帯・簡易トイレのごみが「ここにあり、ここにしかない」ことを知らせるためです。
具体的には、次のようにします。
- 【トイレごみ袋】の外面に「トイレごみ※」と書く
- 油性ペンなどの水に濡れても落ちない筆記具で書く
- よく見える大きな文字で書く
※「トイレごみ」のほかに次の言葉も書くことができます。し尿ごみ/便袋/使用済み携帯(簡易)トイレ
Point 3
市町村からのお知らせをよく読み、託す気持ちでそれを守る
トイレごみの出し方や収集方法が市町村から案内された場合は、よく読んでその内容に従います。
「託す」という気持ちを大切にしたいという願いから、このサイトでは「捨てる」ではなく「ごみに出す」に表現を統一しています。
市町村からの“お知らせ”をよく読む
災害の発生などにより、この〈方法〉を選ばざるを得なくなった場合には、携帯・簡易トイレのごみの出し方についての“お知らせ”が、市町村から広報されることがあります。
この広報(お知らせ)は「ある」こともあれば、「ない」こともあり得ます。
また広報(お知らせ)が「あった」として、その内容が次のようなものであるかもしれません。
- (何らかの事情により)平時から広報されていた内容と一部または全部が異なる
- このサイトで紹介する内容と矛盾する
いずれの場合でも、市町村から広報(お知らせ)があれば、その時点での内容をよく読んでください。
そして、その内容に従ってください。
「捨てる」と言わない理由
このサイトでは、「捨てる」という言葉をあえて使っていません。その理由を紹介します。
ごみの出し方は「守ってほしい約束」
このサイトの「2 準備編」で紹介している「袋のかぶせ方」などは、上手くあるいはスムーズに行うためのコツです。コツは知っていると具合がよいものですが、「必ずそのとおりにしなければならない」という義務ではありません。
一方で、ごみの出し方は重要な内容です。このことは市町村からの広報(お知らせ)であっても、このサイトで紹介する情報であっても、変わりません。
ごみの出し方は、コツに対していうならば「守ってほしい約束」です。
「捨てる」と「託す」の印象の違い
「ごみに出す」という行為は「捨てる」と表現されることがあり、その頻度は少なくありません。
「捨てる」という言葉の意味の1つが「投げ出す/関係を断ち、顧みることをやめる」と辞書で説明されています。私はこの意味を「責任はここまで、というイメージ」で捉えています。
一方で「託す」という言葉があります。
ごみと組み合わせて使われることは一般的にはない言葉ですが、辞書では「あずける/頼んで、まかせる」と説明されています。私はこの意味を「責任を持ったまま預ける感覚」として受け止めています。
ごみに出せるのは「預かってくれる」から
出す側にはやむを得ない事情があり、預かること自体は職務です。とはいえ、他人(ひと)の排せつ物を預かるという行為は、決して簡単なものではありません。
私たちが排せつ物をごみに出せるのは、それを預かって運んでくれる人がいるからです。
私たちにできることは約束を守ることです。
「託す」気持ちで「ごみに出す」
預かってくれる人へのせめてもの配慮として「託す」という気持ちを大切にして、約束を守りたい。
そんな願いを込めて、このサイトでは「捨てる」ではなく「ごみに出す」に表現を統一しています。